プラットホームはおしなべて次第に悪化する
“Shadow Ticket” 以来、ちょっと放心していて、さまざまな本を手に取っては下ろしたりという日々を過ごしています。
小説はタイミング的に頭に入ってこないのでノンフィクション本を、と探してみたところ、ちょうど Cory Doctorow 氏の新刊 “Enshittification” がでていましたので手にとりました。
“Enshittification(エンシティフィケーション)” は真ん中に “shit (糞)” という罵倒語が入っていてあまり品がよろしくはありませんが、現在のウェブサービス、ソーシャルメディアの状態をつかんだ見事な用語です。
たとえば Facebook や Amazon といったようにユーザー同士や顧客と売り手をつなぐプラットホームを念頭におくとわかりやすいでしょう。こうしたプラットホームは最初、ユーザーを集めるために他にはない魅力的な機能を、多くの場合は無料で提供します。これが第一段階。
ユーザーがそのプラットホームのもたらす恩恵に依存したタイミングで、次第にプラットホームは広告主などのために利便性を犠牲にしていきます。ユーザーにとっては広告が増えたり正規のストアではないマーケットプレイスだらけになって不便になりますが、切り替えのコストが高すぎるので離れられません。これが第二段階です。
最終的にプラットホームは本来は顧客であるはずの広告主や小売店の利便性すら低めて、収益を最大化するようになります。Prime Video で人を集めてから広告を導入したり、一部の機能を「プレミアム」に移行したりといった動きですね。
これらはユーザーにとってプラットホームをクソ(shit)にするので en + shit 「クソにする」+ ification 「化」ということで、Enshittification「サービスのクソ化」と呼ぶだけです。
Cory Doctorow 氏はもう何年も前にこの用語を提唱し、さまざまな機会に解説していますが、それがまとまった本になったのはこれが最初です。
彼自身のブログはこの用語の誕生の場であり、思考が深まる現場であります。すでに論考の多くがオープンに書かれていたとしても、それをちゃんと書籍にまとめると売れているのが、ブロガーとして凄いですよね。
このブログでも、こうした情報のリアルタイムの提示から深化を試みることができないかというのが最近の悩み事なので、こうした視点でも参考にしつつ読みたいと思います。