FireWatch: 息をのむデザインとダイアローグの芸術であるインディーズゲームをプレイしたい!したい!
もうしばらくぶりの感覚です。このゲーム、ぜひともやってみたい。
FireWatch は Campo Santo というインディーズゲーム会社が制作した、しかし大きな注目を集めているオープンワールドタイプのゲームです。あなたは1989年に人生から逃げてワイオミング州の森番として赴任してきたHenryとして行動します。
この大自然のなかに人はあなただけ。ただし、小型無線機の先にいるとなりの監視塔の先輩の女性、Delilahだけが、常に指示や、しゃべり相手になってくれています。
仕事は、森に火災が発生しないように、注意深く監視するという、退屈な仕事。Delilahとの他愛もない会話だけが刺激の毎日に、やがて不思議な出来事が起こり始める…。
無線だけでつながった、対話の物語
紹介動画をみていただくとわかるのですが、普通のゲームでプレイヤーを背後から見守っているキャラクターのように、主人公の Henry に対する Delilah の関係や口調は平坦でもロボットのようでもありません。
「その洞窟には入るなって研究者たちは警告していたわ。って、あなた今そこにいるでしょ」
「私は、あなたほどには、ほかの監視塔の人とは離さないわ。同じようには」
「あなた、いま監視塔にいないの? じゃあ、あそこにいるのは、だれ?」
すでにリリースされているプレイ動画などをみていると、こうした会話が絶え間なく、自然に二人のあいだに流れており、プレイヤーは簡単な返事を選択してその流れを制御します。
この流れるように自然な対話が、ゲームの物語の中核を握ってもいます。姿がみえない仲間の監視員の Delilah との無線だけでつながった感情の流れ、信頼、混乱、疑い、思慕といった要素が、プレイヤーを行動させるのと同じくらいに重要なのです。
それはどこかしら、小説のプロットをなぞっているのに等しい、ゲーム内の人物や状況への一体感を予感させます。
Olly Mossによる完璧な色彩と風景のデザイン
FireWatch はインディーズゲームながら、そのデザインセンスやコンセプトの面白さで去年の夏から多くのメディアが注目していました。たとえば Verge が記事にしていますし、Wired などもフィーチャーしているどころか、リリースに際しては NewYorker までもが記事を掲載しています。
その理由の一つには、レトロ調の映画ポスターで有名になった Olly Moss によるゲーム内世界の色調や、風景のデザインがあります。ゲーム序盤で主人公はカメラを手に入れますが、それをどこでも撮影して印刷するサービスがあるほどゲーム内の自然描写は優れているのです。
時間の経過によって暑い昼間が、焦げたような夕暮れが、満天の星空の夜がめぐるつど、リアルタイムで Olly のポスターのなかのような完璧な色調で風景が遷移してゆくのは圧巻です。
まとめ
単純にゲームとして興味があるというよりも、ゲームを枠組みとしてかたられ、仮想的なワイオミングの大自然を足場とした、人間ドラマを語るこの仕組を体験したみたい。私は強くそう思ったのです。
ひょっとすると、こうした世界観と人間対話の融合を強く意識したゲームは、文学的なものの最前線として捉えることだってできるのではないか。そう思うのです。
最後にもう一つこのゲームを贔屓にしている理由に、開発者の Campo Sampo は愛用している ftp クライアントの Transmit などを作っている Panic 社が関わっているのです。意外なつながりですよね。
ただ、問題は現在のところどうやらいまのところ、日本の Playstation Network ではリリースがされていないような…(泣)