レイク・ルイーズ ステーションレストラン。映画「ドクトル・ジバゴ」の一場面にもなったカナダの歴史を伝える店

2016 年 01 月 18 日

かつて私は、映画「ドクトル・ジバゴ」のワンシーンにも使われた駅舎を改装したレストランにいたことがあります。

カナダ・アルバータ州の観光名所であるレイク・ルイーズのほとりにあるこの隠れ家のようなレストラン、"Lake Louise Station Restaurant “は、かつてはCanadian Pacific Railwayのレイク・ルイーズ駅でした。現在では鉄道はとまらなものの、今も横を貨物列車が駆け抜ける、歴史を感じさせる場所です。

1965年の映画「ドクトル・ジバゴ」ではアルバータ州の複数の場所の風景がロケか、ストック映像から使われていますが、これはそのうちの一つの駅舎のシーンで使われているのだそうです。

海外の旅行サイトで調べていても、「こんな場所があるなんて知らなかった」「すばらしい発見だった」と口コミのあるレストランについて、写真で紹介します。

大陸横断の夢が眠る駅舎

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レストラン自体は、レイク・ルイーズから少し離れたボウ川を渡った寂しい袋小路にあります。赤塗りの建物が目印です。

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ついたなら、まず最初は周囲をぐるりと回り、建物と保存された食堂車両 “Delamere” を堪能しましょう。周囲は簡素な庭園となっていて、これも1910年代の、この駅がまだ使用されていた頃を模したものなのだそうです。

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こちらが 1925 年に作られた大陸横断鉄道の食堂車を保存した “Delamere”。いまでも結婚式や特別な機会に利用されています。

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もはや鉄道がとまることのない駅舎も風情があります。レストランは正面玄関に面した大広間と、この鉄道側に面していて歴史的な建築を残している East Room に分かれていますが、選ぶことができるならこの East Room をぜひおすすめします。

歴史を感じさせる East Room での夕食

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さてレストランの方はというと、随所に Canadian Pacific 鉄道の在りし日の名残りを伝える調度が活かされています。たとえばこちらは駅舎の待ち椅子。

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板張りのきしむ床を歩いてゆくと、歴史的な写真や食器が飾ってある落ち着いた部屋に通されます。

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かつての駅で使われていたランタンが窓辺に飾ってあるのをみていると、貨物列車が通って行きました。かつてはこうして巨大な大陸の離れ小島のような駅を照らしていたのでしょうね。

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この日いただいたのは、“Alberta Pork Short Rib” ハーブとスパイスといっしょにゆっくりと焼いた豚のショートリブに、自家製のアップルサイダーをグレーズしてある、みためよりはあっさりとした味の肉プレート。

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同行のネタフルのコグレマサトさん(@kogure)は “British Columbia Salmon” を注文。こちらは切り身のサーモンにディジョネーズとメープルシロップを塗ってオーブンでグリルして麻の実をトッピングしたもの。

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飲み物はカナダのビール会社 Sleeman の Honey Brown Lagarです。もともと19世紀にビールを作り始めたものの禁酒法時代に免許を失い、その後ブランドとして80年代に復刻した銘柄だとか。

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「デザートはいかがですか?」と聞かれてどうせ一口サイズだろうとお願いしたパイがフルサイズだったときの衝撃たるや。

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でもおいしかったので全部いただきましたとも。

レストランの一部は歴史を伝える博物館

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Station Restaurant の一部はカナダ太平洋鉄道の歴史を伝える博物館になっていて、こちらも見応えがあります。たとえばこちらはレイク・ルイーズ駅の駅長を30年務めた James Stanly Boyle、通称 “Stan” 氏の電信装置です。電信士としての腕前に定評があった彼の仕事場を再現しています。

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こちらは鉄道旅行でありがちな革製のトランク。この大きさのものを山と積んで、客車は大陸を東西に走り抜けたのです。

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いまのようにエネルギーがあふれている時代だと想像しにくいのですが、アルバータの開拓は寒さとの戦いでもありました。その名残りの暖房もかざってありました。

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時としては何十人もの犠牲をともなう雪崩などの鉄道事故から克服しつつ、少しずつここは切り開かれ、観光地として定着していったのですね。ブリティッシュコロンビア州の人、アルバータ州の人が鉄道の歴史をとても誇りにしている理由がわかります。

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開拓から、観光地になるにしたがって白黒の写真の主人公たちは炭鉱夫や労働者からみなりのいい紳士たちとなり、ポスターもあざやかになって観光地をアピールします。また行くことがあるなら、このあたりの鉄道の歴史をちゃんとおさえておきたいですね。行き道の歴史の重みが違います。

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というわけで満腹でレストランをあとにしたときには9月末の日がすっかり暮れていました。

レイク・ルイーズを訪問するときには、ホテルで食事をする以外にも、ぜひ足を運んでいただきたい、心の休まる隠れ家レストランです。

ここにいくには

レイク・ルイーズ・レールウェイステーション&レストラン (Lake Louise Railway Station & Restaurant)はレイク・ルイーズホテルから2kmほどの位置にあり、歩いてもいけなくはありませんが坂があるのと帰り道が夜だとたいへん暗くて心細いので車が無難です。

席はそれなりにありますが、事前に予約しておき、希望の席を伝えておくのがよいでしょう。客車は結婚式のパーティーなどで利用可能だそうです。

「かつて私は」シリーズについて

このシリーズは、以前旅をしたのですが、なかなか書ききれていなかった話題について掘り起こしをするエントリとなっています。

旅記事は本当は旅とともに臨場感をもって更新したほうがほうがよいのですが、なかなかそうはいきません。しかしもったいないので、時間がたってからでも、読める体裁に編集してお届けしています。それぞれの記事は公開後に対応する旅カテゴリに格納される予定です。

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堀 正岳 (Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。

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