無意識に好印象を与えたいなら髪を左側で分けるべき?という話題の意外な広がり

2014 年 01 月 13 日

髪を左側(相手からみて右側)で分けるか、右側(相手からみて左側)でわけるかで印象が変わるというのは、当然といえば当然です。

でも相手に対する評価が180度変わってしまうほど大きな影響があるとまで言われると、「えっ」と聞き返してしまいます。

しかし Cracked の以下の記事で引用されている研究によれば、髪の分け目によって無意識に人々が読み取る印象の暗号が、その人の全体像を決定づける効果があるのだそうです。本当なのでしょうか。

5 Seemingly Insignificant Things That Make People Like You | Cracked

左側は男性的、右側は女性的

ブラッド・ピットにしても、ジョン・F・ケネディにしても、よく出回っている写真には一つの共通点があります。それは髪のわけかたが左側という点です。

Crackedの元記事で引用されている論説によると、左で分けるのは「男性的」であったり「自己主張の強さ」を印象づける効果がある一方で、右で分けるのは「女性的」「物柔らか」「オタクっぽい」という言葉で表されることが多いのだそうです。

これを説明するために論説ではちょっと変な調査方法を用いており、俳優や著名人、そして歴代アメリカ大統領の肖像画、知事、議員の髪の分け方をデータベースにして、分類を行っています。

すると髪の分け方は決してランダムではなく系統的に左分けが多い上に、たった6人の右分けの大統領の歴史的評価はあまり芳しくないという結果が得られたとのこと。つまり真に受けるなら、社会的に成功したいなら「左分け」のほうがよいという話になります。

こうした「左分け」「右分け」の印象の違いは頻繁に髪の分け方がかわる女性よりも、ずっと一方に分けがちな男性で決定的な違いをもっており、無意識に受容されるレベルにまで浸透しているというのが筆者たちの主張です。

それはハリウッドの映画にも影響を及ぼしており、たとえば「オタクっぽく、弱々しい」クラーク・ケントは右分けで演じられることが多い一方で、スーパーマンに変身後の彼はいつの間にか左分けになっているという演出などにみられるそうです。

本当だろうか…? そしてむしろ気になること

面白い話なのですが、本当だろうかと調べてみるとさらに状況は複雑になってきます。クラーク・ケントの画像検索は、ざっとみてたしかに右分けが多そうにみえます。しかし一部、左分けがないわけでもありません。

スーパーマンの画像検索も、たしかに左分けが多そうです。とりわけクリストファー・リーヴス演ずるところのスーパーマンはすべて左分けに見えます。でもあれ? 最新作 Man of Steel は基本的に右分け?

Manofsteel

そして元記事で言及される、アメリカ大統領で右分けの人が6人しかおらず、そのうちの5人、ジェームズ・ブキャナン、アンドリュー・ジョンソン、ワーレン・G・ハーディング、ジョン・タイラー、チャエスター・アーサーの歴史的評価が低いという話題についても、言及されていない6人目の右分けの大統領の名前を聞くと「おや」と思うことになります。それはロナルド・レーガンです。

興味がでてきたので、日本にも検索範囲を広めてみると、さらにおもしろいことになります。どうも草食な傾向が強いのか、最近だと右わけの俳優が多かったり、役どころによってかなり異なるようにみえるのです。

見た目と台詞のギャップが面白い例もあり、去年で話題になった「半沢直樹」は基本的に右分けで登場して「倍返し」というわけです。あと歴代総理で分類してみようかと思いましたが額が広めの写真が多くて統計的に有意な判別ができなかったことを涙とともにここに申し添えます。

もちろん日本人は元来こうした髪型をしていなかったわけですから、「左分け」「右分け」の印象の違いは西洋文化に根ざした文化コードで、日本人には無縁のものなのかもしれません。

しかしもっと気になるのは…。

無意識の文化コードが印象を変えるなら…

画像検索の結果話が単純ではないとわかったとしても、男性の髪の分け方に左分けが多いという偏りは歴然としてのこりますし、それによる印象の違いが意識的なのか無意識的なのか利用されている可能性も否定できません。

たとえばMan of Steel のスーパーマンは、歴代の圧倒的な「強者」としてのスーパーマンよりも、もっとナイーブな一人の男の葛藤を描き出す映画でしたから、そのために意識的に右分けが採用されているのでしょうか? でもそんなこと、誰が決めているのでしょう?

一方、ロナルド・レーガンは強い大統領というよりも、物柔らかな印象と相反する強硬な政策が支持されたり、さまざまに評価されたりするわけですから、左分けが不利という話は、鵜呑みにはできません。

私たち個人レベルではどうでしょう?

周囲に「強い人間」としてみられたいという人が、あるいは「物柔らかな人間」に見られたいという人が、鏡をみた印象から自分の髪型の分け方を決めているのでしょうか? 鏡にうつった自分は左右非対称なのに?

科学的に意味のある結論を導くには、もう少し統計学にのっとった調査が必要なのは言うまでもありません。これは文化的習慣として左分けが多いという傾向と、男性的な傾向とが生み出す「間違った相関」である可能性は十分にあるのです。

しかし深く考えれば深く考えるほど、**無意識の印象が我々を動かすなら、後付けで積み上げた論理はすべて無意識に対するつじつま合わせにすぎないのだろうか?**といった、一筋縄でいかない問題もここには含まれているのです。

p.s.

髪をもたない人には関係ない話かというと、どうもそうではないないらしいので、ぜひ元記事の次の項目をご覧いただければと思います。

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堀 正岳 (Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。

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