京急汐入駅前ファミマの「艦これ」ラッピングから軍港めぐりへ
角川ゲームス開発、DMM配信による話題のブラウザゲーム、「艦隊これくしょん」が地元に近い京急汐入駅前のファミリーマートをラッピング店舗としてグッズの先行発売をしているということでしたので、秋晴れの日に足を運んでみました。
なぜ、より繁華街になっている横須賀中央駅ではなく「京急汐入駅」なのかというと、それはこの駅の歴史を紐解くとなんとなく察せられます。
1930年(昭和5年)4月1日 - 横須賀軍港駅として開業。 1940年(昭和15年)10月1日 - 軍施設の所在が明らかになるのは良くないと判断され、横須賀汐留駅と改称。
ゲーム内ではサーバーごとに舞鶴鎮守府、横須賀鎮守府というように「鎮守府」つまりは日本海軍の統括機関の名前がつけられていますが、汐入駅と、隣接する横須賀駅のほうがかつての軍港の正面であったからです。このあたりの心にくい演出、運営は本当によくわかっていると思います。
「艦これ」一色の店内
というわけでラッピングされたファミリーマートの店の内外。お店の方に取材の許可をいただいて撮影させていただきました。
店の外は金剛型戦艦四隻。ちなみにこの左の階段を登ったところにある Hungry Boy は横須賀海軍バーガーのおいしいお店です。
正面左は日向、伊勢、扶桑、大和、山城、武蔵など、大和型戦艦らです。
店内もほぼすべての壁がラッピングされています。台詞もいちいちふるっています。最上くん…。
「誇りで飯が食えますか?」って、あまり深く考えると哲学的になりそうな標語がかかっています。
すみの方で「ヲ級」さんが居心地悪そうに佇んでいます。
細かいところにも演出が入っています。
店内では来年から発売になるスタンドパネルが先行発売されています。全20種類で、かなりの大きさですが、私がいったときには50セット入の箱でずらりと並んでいました。12/11からは横須賀鎮守府限定タペストリーや絆創膏、定規やキーチェーンが加わるそうです。
面白かったのは、子供連れの主婦とみられる客も、グッズをけっこう買っている姿がみられることでした。「どれにする?」「こんごうー」という声も聞こえてきて、艦隊これくしょん、いったいどこまでいくんだと思ったものです。
なお、グッズ販売は汐入駅前だけでなく、横須賀中央西口店、松山横須賀インター店でも行われています。
銀行ATMの上は燃料と弾薬。実に正しい配置です。燃料も弾薬もなければ戦えない、それが「艦これ」の本質!
レジ横には鳳翔が「また横須賀に遊びに来て下さいね」といっています。そう、今回の店舗ラッピングのこころにくいのは、まさにこの点です。
ゲームに登場する横須賀鎮守府はサーバーの名前にすぎませんが、それはかつて実際に横須賀に実在した海軍の一組織なのですから。
ファミリーマートに訪れたら、ぜひその足で軍港めぐりへ
そこでぜひおすすめしたいのが、このファミリーマート汐入駅前店からあるいて数分、国道を渡った反対側にある港から出発する横須賀軍港めぐりを実際に体験することです。
こちらが軍港めぐりの船。風が強くなければ、ぜひ2階の席から風を感じながら乗りたいところです。
軍港めぐりの面白いところは、その日にどんな艦船を目撃できるかは運次第というところです。たとえば今回は運のいいことに改修中のも含め六隻のイージス艦が並んでいるところをみることができました。
逆に、先日の台風30号の災害救難のためにフィリピンに艦船が出動していたときなどは、軍港はかなり空いていたそうです。
さらに運が良ければ、このように船が入港、出航する場面にもいきあたるかもしれません。これは入港してくる護衛艦「むらさめ」。左舷着岸のため、乗組員が左側にあつまっていて、ちょうどすれ違う私たちに手を振ってくださいました。
遊覧船上では、そのときにみえる艦船しだいでさまざまな細かい知識を教えてくれます。この日は停泊していた海上調査船「しょうなん」について、木、あるいはプラスチック製の機雷掃海船について、そしてこの退役した潜水艦についてのうんちくを教えていただけました。
「一ヶ月後にはこの潜水艦はここにはもういないのではないでしょうか」というアナウンスをきいたとき、「おつかれさまでした」と思わず心のなかで敬礼を送らずにはいられませんでした。
帰り道には先ほど入港していた「むらさめ」が停泊作業中でした。ここで兵装についての説明があると、となりに立っていた初老の女性が「戦争はやってはいけないわねえ」とつぶやきました。
それは単に「兵器なんてすべてなくなればいい」「戦争なんてするはずがない」という単純な平和主義的なつぶやきよりも奥行きをもった言葉でした。
そう、ここに並んでいる艦船の先端技術、訓練のゆきとどいた船員たちの動きをみていると、平和とはどんなにたくさんの努力で守らなくてはいけないのか、それが雰囲気で伝わってきます。
戦争とはあまりに簡単にやってくるものです。そこから自分の国を守るためだけでなく、無駄な戦争をすることによって相手の国との禍根を双方に残すことの無益さを日本人は誰よりも知っているのではないでしょうか。だからこそ備えも訓練もする、というのは一見矛盾しているようですが、まだ人類が答えを見出せてないことの証でもあるのです。
さて、帰ってきたらチケット売り場で購入することができる缶詰の横須賀海軍カレーをチェックしてみましょう。こちらは実際の海上自衛隊のレシピのカレーを入れたもので、レトルトのものよりも具材が大きいところが好評です。
「艦隊これくしょん」の一つの魅力は、ゲームのなかにさりげなく、ゲームの一部分として埋め込まれている、かつての日本海軍の事跡や情報です。説明的でなく、ゲームの体験として、かつてあって、いまはもはや存在しない艦船、ひいては日本の過去に触れることができる点です。
横須賀の軍港も、もはやかつての軍港ではありません。しかし戦争を一つもしらない世代がその歴史の歩みを意識する入り口として艦隊これくしょんが果たしている何か。これはまだまだ奥が深そうです。