製作者の熱気が立ち昇る「砂の美術館」: 鳥取ブロガーツアーその3 #tottorip

2013 年 04 月 19 日

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鳥取ブロガーツアー一日目の午後。車は一路鳥取砂丘に向かいます。目的地は砂丘のそばに立つ「砂の美術館」です。

「美術館」というと、いつでも立ち寄ることができ、いつも同じ作品を見ることができる場所というのが普通です。

しかし「砂の美術館」は違います。ここで展示されているのは、1期ごとに新しく制作され、期間が終了すると崩されて二度と見ることができない再現不可能な作品なのです。## 正直みくびっていた圧倒的な存在感

Wikipediaの「砂の美術館」の項目をみるとこのように説明がされています。強調した部分がポイントです。

砂の美術館(すなのびじゅつかん)とは、2006年より鳥取県鳥取市にて、期間限定で定期的に開催されている砂の彫刻(砂像)の展示イベント。第4期までは野外、仮設テントで行われてきたが、2012年4月より屋内での展示がメインとなった。隣接地の別棟には砂の美術館事務所、売店がある。 1年に一度テーマを変えて展示が行われ、年明け~春の期間は次回作の準備・制作期間のため休館となる。

今回取材させていただいたのは4月20日からスタートとなる「砂で世界旅行・東南アジア編」のまさに仕上げの段階で、案内してくださったスタッフも「みな追い込みで殺気立っていますので、上階から御覧ください(笑)」とのことでした。

エレベーターを三階まであがり、回廊部分に出てみると待っていたのがこの景色です。

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巨大な体育館ほどの大きさのスペースのすべてが砂像でうめつくされています。作られているのはアンコールワットや、ワット・プラケオといったアジアの建築や、生活の一風景などです。

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まだ仕上げの段階ですので、大勢のスタッフが目の前で砂の彫刻を作り上げています。ヘラ一本の作業です。

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こちらの女性は設計図を片手に、音楽にあわせてノリノリで彫刻をしています。

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砂像の製作は水と砂だけで行われており、凝固剤などはまぜていないとのことでした。鳥取の目の細かい砂だからこそできる芸当ですね。

また、この写真でみるように次第に乾いていきますので色が変わっていますが、乾いたからといって崩れるということはないそうです。むしろ、水を含んで重くなっている時のほうが崩落の危険が大きいくらいだということです。

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砂像のディテールもすばらしいですが、それ以上に圧倒的だったのがその存在感。

訪問する前に、砂の美術館の写真を下調べにみていたのですが、「ふーん、砂なんだ」くらいにみくびっているところがありました。

しかし実際に眼前にひろがっている砂像は思っていたよりもずっと巨大で、存在感が迫ってきます。石の彫刻では不可能な大きさと表現がそそりたっているのですから、受ける印象も違うわけです。

そしてこのすべてがやがて会期が終了すると崩されてしまう、まさに刹那的なものであることも不思議な気持ちにさせます。これほど重々しい存在が吹けば消えてしまうというのはどういうことなのか。

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長い長い時間でみれば石の彫刻だって不滅の存在というわけではありませんが、砂像はなんだか崩れそうだという先入観と、見た目の存在感のギャップが、時間による作品と、ひいては描かれたテーマの消滅を予感させます。

鳥取砂丘をダッシュ

砂の美術館のあとは、鳥取砂丘にすこしだけ寄ることができました。

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言わずと知れた鳥取砂丘は中国山地の花崗岩が川で流され、陸向きの海流と卓越風によって寄せ集まったことで生まれた海岸の地形です。南北2.4km、東西16kmの範囲に広がっています。

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こちらは強い風によってうまれる「風紋」で、風が砂と触れあうことで砂の表面にひだがうまれる現象です。

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遠くにみえるのが第二砂丘、いわゆる「馬の背」で、さらに先に見えるのが日本海です。

時間はありませんでしたがとにかくあの上から眺めてみたい、ということでダッシュで駆け出していきました(写真の右で先に走っているのは「のまのしわざ」ののまさん(@noma)。このダッシュの様子はのまさんの Go Pro によって撮影されていましたので当事者の視点でご覧になりたい方はぜひこちらの記事からどうぞ。

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息が切れながらもなんとか登り切った馬の背の頂上からの風景。日本海の荒波が尽きることなくやってきます。これが砂丘を生み出す原動力なんですね。

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Go Pro で撮影をしているのまさん。足元は風紋を作る強い風と砂が打ち付けています。

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帰り道で撮影したのがこちらの写真。ぶろぐ「みたいもん!」のいしたにまさきさん(@masakiishitani)がこちらを撮影している様子をこちらからも撮影。砂しかない風景に一人だけで、距離感を喪失します。

砂の美術館の砂像もそうですが、砂丘も「ふーん、砂があるのか」というのでは済まないものがあります。

普段のスケール感、普段の距離感、何が近くて何が遠く、何が大きくて何が小さいのかという感覚が揺らぐ感覚は芸術作品と同じです。

鳥取に来たなら、一度は足を運ばなくてはいけないというのも納得。

さて、駆け足のブロガーツアーはたった20分の立ち寄りで砂丘を離れ、次の目的地、三朝(みささ)温泉を目指します。

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堀 正岳 (Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。

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