3つの海の分水嶺、サンワプタ峠から永い時と遠い海を想う

コロンビア氷原を越え、南にむかった路傍に小さな道標があります。目立たないのでうっかりと通りすぎてしまいそうになるのですが、ここがサンワプタ・パス(Sunwapta Pass)、北のジャスパー国立公園と南のバンフ国立公園の境界であり、コロンビア氷原の水の分水嶺です。

このあたりを境目に、コロンビア大氷原からとけて流れだした水は北極海へ、太平洋へ、あるいは大西洋へと流れていきます。ええ、この記述は間違いではありません。ここから、川の水は3つのまったく異なる海へと流れてゆくのです。

どうしてそんなことが可能なのでしょう? それは地図で確認するとあきらかになります。

三つの海の分水嶺

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いうまでもなく、コロンビア氷原はカナディアンロッキーでも最も標高の高い台地の一つです。標高が高いからこそ気温も低く、氷河が今の時代まで生き残っているのですね。そしてコロンビア氷原の周囲はさまざまな山に囲まれています。氷河は谷をえぐりながら、北へ、南へと水路を作っていきました。

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その結果、北向きの谷に流れ込んだ水はこのまま北上して、やがて北極海へと直接流れ込むことになります。そしてアメリカ大陸を南北に背骨のように貫くロッキーの西側に出た水は太平洋へ、東側の水は長い長い距離を流れ、さまざまな川へと注ぎこみつつ、やがては大西洋まで辿り着くのです。

日本でも日本海と太平洋の分水嶺をみることはありますが、なかなか3つの海の分水嶺というのは見かけることがありません。

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ここで、これまで通ってきたジャスパー国立公園が終わります。

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そしてここからは、観光地であるバンフの町が存在するバンフ国立公園が始まります。

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カナディアンロッキーを旅する時、目の前の風景の雄大さに圧倒され、「ああ、すごいなあ」というため息ばかりがもれます。それは当然のことなのですが、そこからさらに一歩踏み込んでみると、この大自然の見えない記号を読み取ることができます。

これらの渓谷はすべてかつては氷河が削った、何万年もの営みの結果であること。この大氷原も、一度は地球上のほとんどの生命が危機にひんした氷河期のなごりであること。そしてその残滓である氷のとけた水が、遠い遠い海に向かって流れ去り、今度は多くの人々の生活を支えているであろうこと。

アイスフィールド・パークウェイは、その懐深く踏み込むほどにながい時をさかのぼり、広い大陸のスケールを感じさせる場所でもあるのです。この小さな道標のそばに立つ時、ぜひそれを思い出してみてください。

アルバータ州訪問レポートについて

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アルバータ州観光公社の依頼を受けたネタフルのコグレマサトさん(@kogure)のお誘いで参加しています。アルバータ州観光公社には渡航費、宿泊、現地での案内をお世話していただいています。記事の内容はすべて私(@mehori)の見たまま、感じたままに書かせていただいています。Thank you Alberta!