ソール・ベロー “Seize the Day”

トミー・ウィルヘルムは、失敗した役者で職もなく、家内と二人の子供とは別居状態。経済的にも破綻しつつあるのにこの期に及んでもまだ子供っぽさが残る四十代半ばのうだつの上がらない主人公。

その彼が一日を通して出会う、ゆるやかな経済的、精神的破滅を追った短編小説が “Seize the Day”。 邦訳が「この日をつかめ」「その日をつかめ」「現代をつかめ」と一定しないうえにいまは手に入らないという…。

ペテン師に騙され、経済的に成功した父親にも見放されたヴィルヘルムは自己憐憫にひたりきった情けない幼稚な男ではあるものの、どこか憎めない。

ラストの、知らない男の葬儀にまぎれこんで激しく慟哭するシーンは、やるせなさとどうしようもなさばかりで、救済の予感すら感じ取るのが難しいのですが、だからこそ、最後に残った人間性のようなものが、この短編を引き立てているのでしょう。

いま読みたいなら、Penguin Classicsのみか。