「第2期だぜベイベー!」オバマ大統領の晩餐会スピーチがコメディアン顔負けですごい

投稿日:2013年5月1日 更新日:

一国の大統領ともなれば多少のユーモアをもたせた発言も大切です。でもコメディアンよりも面白いスピーチとなると話は別です。

1920年から続く伝統である White House Correspondents' Dinner という、ホワイトハウスを取材するメディアのための晩餐会に出席したオバマ大統領のスピーチがあまりにジョーク満載で、23分もの動画のあいだ目が離せませんでした。

そもそも登場シーンからしてこれです。「私の新しいラップの入場曲はどうだい? ラッシュ・リンボー(過激な保守系トークショーの人)が警告したとおりだろう。第2期だぜベイベー!

だ、大統領ー!

ユーモア、メディア、そして政治

この調子はスピーチのあいだほとんど変わりません。ジョークを飛ばしつつ、自分に批判的なメディアに冷水を浴びせつつ、政敵を茶化しつつ、晩餐会のなごやかな雰囲気を味方につけてやりたい放題です。

特に面白くて、個人名などがないので日本でも理解しやすいジョークだと次のような感じです。

  • 自分の見た目が老けてきていて、老人向け雑誌の表紙を飾ったことに関連して「たしかに私も最近老けてきて、在りし日の黒人ムスリム共産主義者じゃなくなっているのは認めよう」→ 政敵が彼のことを「黒人」「きっとムスリムに違いない(実際はクリスチャン)」「彼の政策は共産主義だ」と糾弾するのを皮肉っている。(2:10)
  • 「今日はCNNも来ているね。最近いろいろとバッシングを受けているようだが、私は彼らが事実をあらゆる方面から報道する姿勢を高く評価している。それだけやっておけばたまたまどれかが正確な報道になることもあるだろうから」(6:50)
  • 「ヒストリーチャンネルは今日来ていないが、たぶんそれは例の『オバマは悪魔』写真に恥じ入っていたからだろう。だからといってFOXニュース(保守系メディア)が遠慮して欠席することはなかったみたいだが、彼らは彼らでその比較はサタンに対して不公平だと思っているようだ。 → FOX は常にオバマ陣営への(しばしば理屈を度外視した)攻撃で知られる(7:30)
  • 「もちろんプレスのことは尊重している。我々はお互い違う仕事をもっているだけで、私の仕事は大統領であること、君たちの仕事は私に慎ましさを思い起こさせることだ。実のところ私のほうが仕事をうまくこなしているが」(8:50)
  • 「最近のメディアの問題は、みんなシニカルだという点だ。私がキャンプデービッドで射撃をしていたときの写真についてあれはフォトショップしたものだと囁く人が多かった。

    Obama1

    告白するが、たしかにそのとおりだ。実際の写真はこちらだ。(9:13)

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  • 「共和党のみなさんは先の選挙で何が起こったのかまだ検討中だと思うが、マイノリティの票も重要だというのは周知の事実だと思う。自己中心的だといわれるかもしれないが、私はここから始めてはどうだろうかと思うマイノリティを一人推薦できる」(手を振りながら)「やあ、私だよ。お試しということでどうだい?」(11:24)
  • 「一期しか議員をしていないのに大統領を目指すとか最近の若造は!」(オバマは一期しかしてない)(14:06)
  • 「オバマ記念図書館を生まれた街につくろうというのだけど、それよりは合衆国内がいいなと思う」(オバマは本土うまれではないという陰謀説へのあてつけ)「ははは、今のジョークがいずれくると思っただろう? 予想できなかった人は? ギャラップ?」(Gallupの選挙予報は途中まで一貫してロムニー候補優勢と報じていて大外れになったことへのあてつけ)

最後はスピルバーグ本人が動画で登場。

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「リンカーンの次はOBAMA」という映画を作るのが自然だが、どうせもうレームダックなんだし、いま作り始めてもいいじゃないか」

「問題は誰をオバマにするかだが、答えは明らかだった。ダニエル・デイ=ルイスさ!」(ダニエル・デイ=ルイスは徹底した役作りで知られる)。

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「こんにちは、ダニエル・デイ=ルイスです」(大統領本人です)

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「彼になりきるには、彼自身を知るしかなかった。何が彼を突き動かすのか、なぜ健康保険問題を優先したのか。なぜ怒らないのか。正直な話、私がオバマ本人だったら常に怒っていると思うよ」(大統領本人です)

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「でも私は違う。私はダニエル・デイ=ルイスなんだから」(繰り返しますが大統領本人です)

結びの言葉とメディア、政治について

ここまでジョーク満載のスピーチをしていますが、最後の五分だけはまじめに、ボストンの爆破事件の犠牲者、テキサスの爆発事故の被害者、中部での洪水について言及して、自分の仕事が難しいことを、そしてメディアの助けなしにはできないことに言及してスピーチを終えています。

ジョークだけかとおもいきや、途中要所要所で彼の大統領としての職務が大変であること、機能していない議会への苛立ち、いっこうに手を取り合おうとしない二大政党への皮肉、すべてをシニカルに視聴率に変換しようとするメディアへの揶揄、政敵への切り返しなどがふんだんに散りばめられていて、本当にすごいものを見てしまったと思います。

あまりにおもしろくて、このあとに続いたコメディアンの Conan のトークが色褪せるほどです。

一方で思い起こすのは、この人はボストンの爆破事件があった際、まだ犯人が捕まっておらずボストン近郊に潜伏しているという情報があるなか、現地に向かって追悼式に出席していたということです。

テロリストなら、二段階の計画をたててのこのこやってきた大統領を爆殺するくらいのことは考えるでしょう。実際、側近、警備の人々もボストン入りには反対していたそうです。

しかしそれを押し切る行動力や、妙なひとなつっこさ、そして人間的魅力を兼ね備えた人物だということは彼の伝記や書籍を読んだ時から思っていたことでした。

きれいごとばかりではない政治の世界ですが、なんだか今までの大統領とは少し異なる匂いのするこの人が、歴史に名を残すような仕事をできればよいなと思うのでした。

  • この記事を書いた人

堀 正岳

堀 E. 正岳。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Evernote ライフスタイルアンバサダー。ScanSnapアンバサダー。この他のブログに、Lifehacking.jpClimate+を運営しています。 著書に「理系のためのクラウド知的生産術」」(講談社ブルーバックス)、「Evernoteオールインワンガイド」(インプレス・共著)、「iPhone習慣術」(インプレス・共著)、「モレスキン 「伝説のノート」活用術」(ダイヤモンド・共著)、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)

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