2024-09-15-0359
クローニンの “The Citadel” 「城塞」の新訳が出たのを書店でみていたので気になっていたのですが、ちょっと値段が高いのもあって手を出せずにいたところ、こんな話が飛び込んできました。
「城塞」気になっていたのだけれども、翻訳において改変を容認しているというのは気になる
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) September 14, 2024
こうして表で言わないだけで、実際のところ原書と改行や表現が違ったり、細かい部分が違う本はけっこうたくさんある https://t.co/VtJLTAM9kS
翻訳を担当した作家の夏川草介氏へのインタビュー記事ですが、原文にはないエピソードや情景描写を追加したのではないかということで話題になっていたのです。
好意的に読みたい部分もあるのですが、さすがにこの記事の書き方だと原作改変をしているように読み取れるので、戸惑ってしまいます。
所々に、恐らく本人が書きたかったけれど書ききれていないんじゃないかと思うところがあった。もう一つは、過去に出ている日本語訳が本当に素晴らしいのですが、原文にはない面白いストーリーやエピソードを随所に入れていることが分かって、自由にやっていいんだと、私の中である程度は吹っ切れた部分がありました。それからは頭の中にいるクローニンと相談をしながら訳すことに加えて、作家として書く作業にだんだん移っていったという感覚です。
今の若い人たちが楽しく読めることを一番の目標にしましたから、そこは自分なりに変更しているところです。例えば、会話が長くなりすぎないように、あえてオリジナルの情景描写をそこに挿入して、時間の経過が分かるような工夫をしています。
このエピソードを読んで、ベンヤミンが「原作は翻訳可能性を内包している」みたいなことを言っていたのを思い出して「翻訳者の使命」を本棚で探そうと思ったら、なんとそれが収録されている「ベンヤミン・コレクション2」が抜けている。
仕方ないので取り寄せるついでに、残りの巻も集めておくことにした。