郡山で自然米100%の酒造りに挑戦する金寶酒造・仁井田本家:郡山・福島ブロガーツアー(5)

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郡山・福島ブロガーツアー2013秋、一日目の最後に訪問したのは、郡山で自然米100%のお酒作りに挑戦し続けている金寳自然酒・仁井田本家です。

金寶(きんぽう)の「金」は所在地である郡山市田村町金沢字高屋敷の金沢から、「寶」は「宝」の旧字体で、仁井田本家の屋号である「寶来屋」から取られたのだそうです。正徳元年(1711)に創業の300年の歴史のある蔵です。

しかし歴史があるだけではありません。仁井田本家は自然米100%、天然水100%、純米100%という難しい酒造りにあえて取り組む、実に現代的でチャレンジングな蔵でもあるのです。

そんな仁井田本家を訪問して、今回は特別に蔵のなかを見学させていただくことができました。

自然米100%、天然水100%、純米100%の醸造

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ここでいう「自然米」とは、農薬や化学肥料を一切使わずに栽培しているお米のことを指しています。現在、自社田5ha(平成25年現在)に加え県内外の契約農家から仕入れたお米のみを使用しています。

また水はともに阿武隈水系の伏流水である硬水の井戸水と、軟水の湧き水をブレンドするという独特の手法をとっているそうです。

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もちろん洗米、タンクの洗浄などもこの天然水で行うという徹底ぶり。私たちも白衣に帽子を着用して見学させていただきました。

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洗米場所や、麹室を順に説明していただいていて気づいたのは、それぞれの主要な部分は昔ながらの蔵の建物になっており、さらにその上を覆う天井が付け足されているというところです。

むかしはきっとこの建物からこの建物へ、屋外を歩いて回ったのだろうなあという雰囲気がそのまま残っています。きっと片時も酒造りを休むことなく、古い建物に少しずつ付け足しながら大きくなったのだろうと想像できます。

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こちらは酛場(もとば)。ブドウ糖をアルコールに変える酵母を育てるためにひんやりとした冷気の状態に保たれています。

歴史ある蔵の建物のなかに、この酛場のように新しく作られた施設や設備が所狭しとひしめいていて、伝統を守るだけではなく積極的に技術を導入している様子がうかがえます。

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酒造りの工程を熱っぽく説明してくださった番頭さん。自然米100%はどれだけ難しいことなのか、どうして水はブレンドされているのですか?といった質問にも丁寧に答えてくださいました。「自慢するわけではないですが…」と前置きをおきながら語る言葉のはしばしに、ご自身の作られるお酒への強い自負がうかがえました。

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こちらが仁井田本家の本来の表門。この横には旧三春街道の細道があり、昔はここを人が行き交った名残を残しています。

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さて、蔵の見学を終えたあとはお酒の試飲もさせていただきました。こちらでは複数のブランドの日本酒が醸造されており、自然米の美山錦でつくられたキリッと辛めの「穏」(おだやか)ブランドや、地元でしか手に入らない「田村」ブランドなど、味の好みにあわせて選ぶことができます。

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いただいた中で好みだったのがこちら、山廃純米吟醸です。山廃とは? 先ほど写真で紹介した酛場で酒母を増殖させる際の工程を指しています。大きく分けて生酛系と速醸系の二つの作り方のうち、乳酸菌を空気中から取り込んで雑菌を抑える「生酛系」の工程の一種です。

生酛(きもと)とは、現在でも用いられる中で最も古くから続く製法で、乳酸菌を空気中から取り込んで乳酸を作らせ、雑菌や野生酵母を駆逐するものである。酒母になるまでの所要期間は約1か月。所要期間が長いのは、工程が多く手間が掛かるのと、醗酵段階も完全醗酵させるからである。現在でも時間や労力が掛かるので敬遠される傾向にあるが、成功すればしっかりとした酒質となるため、伝統の復活のために取り組んでいる酒蔵も増えてきている。主な工程は以下の通り。

米、麹、水を桶(タンク)に投入 > 山卸 > 温度管理 > 酵母添加 > 温度管理 > 酒母完成

しかし、腐造や酸敗のリスクが大きかったことから明治42年(1909年)に国立醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)によって山廃酛が開発された。

Wikipedia 「日本酒 / 生酛系」より引用

山廃」の「廃」はこの工程のうち山卸という、桶のなかで蒸米を櫂ですりつぶす工程を省き、低温で時間をかけて酒母を育成するという明治に生まれた製法なのだそうです。「山卸を廃止」だから「山廃」なんですね。こうして聞くだけで、あのひんやりとした酛場の冷気が思い出されます。

いただいた山廃吟醸の味はトロリと甘く、ワインで言うとディケムのような、口の中でお酒が遊ぶ感覚があります。ああ、これは燗でほしいですね。

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説明をうかがっていて尊敬したのが、仁井田本家が伝統を守るだけでなく、未来にむけて着実に夢を描いている酒造だという点です。

たとえば2025年までに金沢の60町歩をすべて自然田にするという目標や、地元である田村を自給自足の有機農業の里とすることなどです。杜氏(とうじ)に造りをまかせるのではなく、蔵元本人が杜氏を努めるだけでなく、スタッフ全員が酒造りに参加するプロ集団を作るという意気込みも、若々しさを感じます。伝統が若々しく生きているというのは、なんとも心強いことではないでしょうか。

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見学を終えて外にでると、会津の方角には見事な夕焼けがみえました。あたりは少し冷えてきて、取り入れの終わった田畑はどこまでも静かです。やはり福島はいいなあ。

p.s.

仁井田本家のお酒はネットでも各所で取り寄せることが可能ですので、ぜひ調べてみてください。