南極をいえばペンギンといったように反応がよいのに対して、北極とはどんな場所なのか、イメージしにくいという人がほとんどでしょう。

氷に覆われているという知識はあっても、南極と違って陸がない、海の広がる場所だと説明したら驚かれることもあるほどです。

その北極が、いま「なくなる」ことが懸念されています。北極がなくなる、それは今まで私達が知っていた北極が北極でなくなる日のことを指しています。

ピーター・ワダムズの「北極がなくなる日」は、原題が “Farewell to Ice” 「氷よさらば」と「武器よさらば」をもじったタイトルになっていることからもわかるように、北極の特徴である広大な海氷がどのように維持されているか、そしてそれがどうしていま消えつつあるのかについてのわかりやすい解説書です。

本書のよいところは、そのバランスの良さです。氷とはなにか、いままで北極はどのような状態で悠久の時を経てきたのか、そしてどのようにしてそのバランスが壊れつつあるのかが、高校生ほどの知識で理解できるように書かれています。

だからといって解説を控えている部分はなく、フィードバック、海洋循環などといった気候学、海洋学の面白い話題もちゃんと盛り込んでいるかっこうの入門書です。

最終章では、起こりつつある変化に対して諦観をもって受け入れるのではなく、むしろ積極的に、アグレッシブに気候変動を止めなくてはいけないというメッセージが書かれていて、ここは学者によっては異論があるところかもしれませんが一つの意見として重要性をもっています。

「武器よさらば」どころか、「武器を取れ、北極を、地球を守れ」と呼びかける警告の書として、まさにいま重要性が高まるテーマの一冊です。