「作るひと」の心を刺激する、小島秀夫率いるコジマプロダクション10周年記念展

ゲーム・クリエイター小島秀夫が率いるコジマプロダクションの10周年記念展「BEYOND THE STRAND:創造と挑戦の航路」が本日、10月31日から麻布台ヒルズギャラリーで開催されますが、ひょんなことで内覧会にお誘いいただき、ひと足早く展示を拝見してきました。

本展示は KOJIMA PRODUCTIONS の生み出した異色のオープン・ワールドゲーム DEATH STRANDING と DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH の制作に関連する資料を中心に、10年にわたるゲームづくりの現場の息づかいを伝える内容になっています。

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小島秀夫氏といえば、タイトル毎に異なった革新的なゲームシステムによって生み出される個性的な体験と、シネマティックな脚本や演出によって描かれるドラマの厚みが世界中で支持されています。

しかし消費者として私たちが体験するのはあくまで完成したゲームです。小島秀夫氏や KOJIMA PRODUCTIONS という会社についても、私たちがふだん目にするのはリリースされ、評価された結果の部分です。

では、その創作物はどのようにして無から生まれてくるのでしょうか?

DEATH STRANDING というゲームについてもですが、大手企業の傘下に属さない独立したスタジオとして KOJIMA PRODUCTIONS が無から生まれた歴史にも、一ファンとしては興味を掻き立てられます。

この時代において「作ること」はいかにして可能になるのか? へのヒントがそこにあるからです。

歩けば、そこに道ができる

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本展示は DEATH STRANDING という新 IP の制作にまつわる First Phase から、DEATH STRANDING 2 に至る Second Phase、そして今後予定されているタイトルを紹介する Third Phase に大きく分かれています。

それはそうだろうと思うかもしれませんが、スタジオができたばかりでイメージが形を取るまでのフェーズと、モチーフをさらに膨らませるフェーズとで展示の趣向が違うので注意深くゆっくりと見るのがおすすめです。

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世界観が生み出される過程で制作されたデッサン、キャラクターの原案、脚本や、トレーラーの素案など、編集過程に生み出される生のアイデアが資料を通して語りかけてきます。

体験したゲームと寸分変わりがない箇所もあれば、制作の過程で削ぎ落とされた部分もあり、この雰囲気の違いを細かくチェックできます。

我々が受け取るのは作られた成果ですが、ああ、作っている様子はなんて楽しそうなのだろうかと思うわけです。ゲームも遊びですが、これもまた作り手にだけ許された遊びではないですか。

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個人的な体験もあって足が止まったのが、アイスランドのロケハンを通して風景だけではなく「歩きにくさ」といった体験もゲーム内の要素として取り入れられていたというくだりです。

私は北極圏に存在するウナラスカ島で似たような地形を歩いたことがあるのですが、DEATH STRANDING をプレイしているときの足元のおぼつかない感覚が、地形に張り付くように育った下生えの歩きにくさとどこか似ているとかねてから感じていました。それが錯覚ではないとわかったのは興味深い収穫でした。

ゲーム制作に意図的に織り込まれている体験は、視覚やアクションの雰囲気だけに限らず、こうした身体的な感覚を含んでおり、さらにそれを意識的に選択する積み重ねであることがわかります。

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プレイヤー移動経路のヒートマップもじっくりと吟味する価値がありました。ライトなプレイヤー向けの簡単な地形から高難易度のルートまで、ゲーム内のプレイヤーの行動はすべてデザインされた結果になっているわけです。

プレイヤーは自由に操作していたとしても、そこから得られる体験はデザイナーが意識的に選び取ったものであることは、なかなか気づきにくいのでこうした展示で理解できるのは貴重です。これは VRワールドの制作といった、3次元の制作をする人にとっても有益な展示でした。

道はやがて、仲間を呼ぶ

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Second Phase の展示はさらに踏み込んだ内容になります。確立した世界観をどのようにしてさらに膨らませるのか、その試行錯誤を数多くの資料や立体展示を通してみることができます。

DEATH STRANDING / DEATH STRANDING 2 といえば、BB という赤ちゃんといい、どこに目の焦点をあてればいいのかわからないほど奇妙な造形の敵キャラクターといい、野心的な表現が大量に登場します。

この、理解できないものが画面上に現れたときの戸惑いやスリルが自分にとってゲームが「楽しい」と感じられる大きな要素でしたので、このパートの展示は見ていて大満足でした。

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DEATH STRANDING の世界は今後もアニメや映画といった形で拡張されることが決まっており、その告知画像や資料なども展示されていました。

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Third Phase では、現在開発が進められている新タイトル「OD - KNOCK」や「PHYSINT」の資料が展示されており、今後への期待が高まります。

特に、「OD - KNOCK」については恐怖という感情をどのようにゲームプレイに封じるつもりなのか、予告編をみているだけで想像が刺激されます。

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あの「OD - KNOCK」の予告編に登場した扉のインスタレーションも登場し、不安になるノック音が鳴り響いていました。そしてドアの隙間からは…。

まだ道の途中

ゲーム制作の資料の展示は、それだけだと断片的で、どこに焦点があるのかわかりにくい部分があります。そこで意識したいのが、この展示のすべてが小島秀夫氏のビジョンからスタートし、多くのスタッフとのつながりによって生まれた創作過程の可視化だという点です。しかも、それはまだ道半ばなのです。

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絵であれ、3Dの制作物であれ、いまやそれなりのクオリティのものが生成AI で作れてしまう時代になっています。それはそれで利用可能な場面はあるのでしょう。

しかし、なにか伝えたいビジョンがあり、それが多くの人々との協力で生み出されてゆく、熱量や迫力にこそ人は魅了されるというのもまた真実です。

この時代になにか「作ること」にこだわっている人ならば、必ずなにかの発見が期待できる、そんな展示会だったと思います。

Niantic Spacial と共同制作した AR ゲームがかなり良い

ところで本展示会ではスマートフォンで体験できる AR 展示「DEATH STRANDING ODRADEK: TOKYO PROTOTYPE」も開催されています。

位置情報ゲームで知られる Niantic Spacial と KOJIMA PRODUCTION の共同制作になっていて、会期中に会場でしか体験できない特別なゲームです。

アプリを入れたりするのがちょっと手間ですが、「必ず」やってみてください。絶対に後悔はしないはずです。

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アプリを起動すると、会場から地上階へと誘導され、そこにあるオブジェをスキャンするように指示されます。スキャンが終わると、DEATH STRANDING の世界同様、荷物を集荷して目的地への旅が始まります。と、いってもほんの100mほどです。

スマートフォンの画面を通して、実際にゲーム内の体験をしているような演出が繰り広げられます。音もかなりよいので、ぜひイヤホンを忘れずに!

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指定された場所に荷物を運び終わると、あれ、画面内に雨が…しかも様子が…ああ、奴が!

夜だとかなり雰囲気が出ますので、ぜひ体験していただきたいコンテンツになっています。

会期は12月20日まで。ぜひ足を運んでみてください。

  • イベント名:KOJIMA PRODUCTIONS 10th ANNIVERSARY EXHIBITION BEYOND THE STRAND:創造と挑戦の航路
  • 会期:2026年10月31日〜12月20日
  • 公式サイト
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2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。