VergeのオリジナルSFシリーズ「Better Worlds」がウェブメディアの未来を指し示している

VergeのオリジナルSFシリーズ「Better Worlds」がウェブメディアの未来を指し示している

Vergeはテクノロジーと批評との交点にある独特なウェブメディアです。ニュースも伝えますが、常に独特な批評的観点、話題の深部に切り込む姿勢があります。

そのVergeで新年から始まっている新しいプロジェクト「Better Worlds」があまりにこれまでの編集記事の枠を越えていて、めまいがするほどでしたのでぜひ知ってもらいたいと思うのです。

Better Worldsはボーイング社がスポンサーになったオリジナルコンテンツのプロジェクトで、10個のフィクション、それらのうち5つのアニメーション映画、そして5つのオーディオ版のパフォーマンスから構成されています。

いうなれば、Netflixにおける「Netflixオリジナル」みたいなもので、週刊誌のなかの文芸連載みたいなものだと考えてもいいでしょう。

これらの物語に共通しているのは、テクノロジーが生活を向上させ、立ちはだかる問題に対して解決や希望を与えるビジョンを提供するというテーマです。

現実が暗く、人々の心が互いに対立している時に、そこから生まれるフィクション、特にSFは暗い、ディストピアな未来像に陥りがちです。

それをあえて、希望の物語に変えることで「スター・トレック」や「鉄腕アトム」がフィクションを通して未来への希望を照らしたのと同じような効果を与えることはできないかというのが、Better Worldsが目指しているビジョンなのです。

正直なところ、これは一つのウェブメディアがとりくむには大きすぎる問題なのですが、ただ流れてくる情報を報道するだけではなく、あえて未来への提言や道筋を立てようと努力している点を大いに評価したい。

これは、Vergeというテクノロジー批評的なメディアにおける「社説」のようなコーナーだと考えることもできます。ただ、文句をただいうだけのオピニオンではなく、フィクションにそれを委ねることである種の責任からは逃れつつ、自由に未来を描いてみせるタイプの社説として、うまく機能しているともいえるわけです。

これをウェブメディアの未来と言わないでなんというのか。

Better Worldsではいま2つの物語がすでに提供されており、それぞれに動画、あるいは音声版のアダプテーションが追加されています。

音声版はSpotifyでも提供されており、Google Homeなどから聞くことが可能です。

2月前半まで続く10の物語による祝祭を、ぜひ見届けてください。

Written by
堀 正岳