建物を黒く表現したアメリカの地図が人間活動のスケールを浮き彫りにする

人間は地球や自然に比べればちっぽけな存在ですが、それでも社会を形成し、開発を通して地球の表面に膨大な改変をもたらしています。

たとえば国際宇宙ステーションから眼下の地球を眺めた映像をみれば、どれだけ地上が電灯で明るく灯っているかが肉眼で見て取れます。

それは地上のすべてを塗り替えるほどではなくとも、巨大な都市とそれをつなぐ道路と郊外の住宅地によって星座のように、細菌の生み出す網目のように、地上を柔らかく覆う文明の模様です。

そうした人間影響を可視化する一つのこころみとして、マイクロソフトがGitHubに公開している1億2500万個ものアメリカの建物のフットプリントのデータがあります。

これは航空写真を機械学習アルゴリズムを通して建物を同定し、それを多角形で表現する近似を施した上でGeoJson形式で保存された、誰でも利用可能なデータになっています。

それをNew York Timesのデータ可視化チームが美しいビジュアライゼーションで提供している記事がありました。

[blogcard url=“https://www.nytimes.com/interactive/2018/10/12/us/map-of-every-building-in-the-united-states.html?smid=fb-nytimes&smtyp=cur&fbclid=IwAR1cygHYq83w4zTQC4bR4V2haZSn9_LhEUBjSS_r7Wx5OYSy_VSeSQue83M”]

たとえば米国全体をみたのがこちらの図です。国境と州の境目は薄い灰色の線で表現されていますが、それ以外の黒い点はすべて建物です。地形ではありません、すべて、人間が作り出したものの形をなぞった姿なのです。

{ . }

こうしてみると、ちょうど乾燥した西部と湿っていて植生の多い東部との境目が非常にわかりやすくみえてきます。また、北部の工業地帯や大都市の大きな黒い塊も目に焼き付きます。

{ . }

こちらはアパラチア山脈の一部を切り出したもの。地形の褶曲にそって建物がびっしりと存在するものの、どうしても建築することができない山の頂上部が白く浮き上がっているのがみえます。自然と人間との境目そのものです。

{ . }

こちらは私が生まれたシカゴ郊外のエバンストンから北側を眺めた様子です。南北に流れるデイ・プレインズ川にそってフォレスト・リザーブと呼ばれる保護地が広がっているのと、ネッド・ブラウンズ・リザーブの森が左下に白く見えています。

それ以外は、綿密な都市開発で生み出された郊外の住宅街です。碁盤のような道と、その中を編み進む住宅地の小道、そして商業施設などがみえています。

{ . }

こちらはニューヨークを一個一個の建物がみえるところまで拡大した様子。セントラルパークが白く大きく見えていますが、それ以外はマンハッタン島の摩天楼です。

都市や郊外に注目すれば、いかに人間が凄まじい影響を土地にもたらしているのかがわかります。しかしその一方で郊外にいけば、人間が自然に対してようやく立ち向かうことができている限界線も見えてきます。

人間がすべてを支配しているように見える場所もあれば、自然の地形のもたらす制限や、歴史的な経緯を引きずっている場所、過去の都市計画の遺物や、経済的格差のもたらす土地利用の違いも明らかです。

{ . }

この一つ一つに誰かが住んでいて、誰かが勤めていて、誰かがいまも出入りしている様子も思い浮かべてみてください。

この簡単な表現で、ちっぽけな人間がそれでも3億人集まったときにもたらす住まいのスケール感と、それでも自然には勝てない土地利用の限界のスケール感を一望することができるわけです。

NYTの記事上では任意の街を拡大したり、Controlキーを押しながらドラッグすることで視点の切り替えもできますので、お好みの場所を御覧ください。

 

Author Image

2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。