2000個の玉を使って音楽を奏でるWintergatan Marble Machine(メイキング動画あり)
ハンドクランクを回すと、弾み車が勢い良く回転をはじめ、その動力が次々に鉄球をもちあげてあらかじめ設計されたタイミングで音階とパーカッションを鳴り響かせてゆく。バンドWintergatanのMartin Molin氏が制作したMarble Machineは、見ているだけで目に喜びを与えてくれる芸術作品です。
原理は目に見えるとおりですが、2000個の玉の重さ、アームが反応する速度、力が伝わるタイミング、いったいどれだけの思考と試行がこの機械にこめられているのか、そしてここまでの演奏ができるまでにどれだけの練習をしたのか、ただただ見事です。
詳細なメイキング動画
バンドのサイトにはメイキング動画のシリーズも公開されていて、細かい作業工程や考え方が紹介されています。
たとえば、こちらはメインのホイールと、ギアを切り出す様子のメイキング動画。
フライホイール部分のメイキングがこちら。フライホイールはハンドクランクとは独立に回りますので、ある程度勢いを与えたあとは一定の速度で回転して音楽のペースメーカーとなります。
こちらがパーカション部分のみの調整とレコーディングを行っている様子です。実際の動画では、各パートを個別にレコーディングしてミックスしているようですね。
ところで、これは「ピタゴラ」マシンなのか?
日本のメディアで紹介された際に、これを「ピタゴラスイッチ」的なと表現しているところがありました。海外だと Rube Goldberg マシンという言葉を使っているところもあります。
私は、これはちょっと不正確なのではないかという気がしています。ルーブ・ゴールドバーグマシンは、その本質として「普通にやれば簡単なこと」をわざと機械で煩雑にやるという手続きがあります。
よく例に出される “Professor Butts and the Self-Operating Napkin” 「バッツ教授の自動ナプキン」をみると違いがわかると思います。スープを飲むために手を動かすと、レバーが引かれ、クラッカーがとびあがり、鳥がそれをとるために飛び、そのために別のレバーが動き…と、実に無駄な機構がつながっています。
Rube Goldbergマシンはいまではピタゴラスイッチのように、うまく動くカラクリのことを指していることが多いのですが、もともとは機械化に邁進する20世紀を風刺するものでした。
Marble Machine はこれに対して、一切の無駄がありません。手の動力で玉を動かし、音楽を奏でるという機能に向けてすべてが設計されているのですから、これを Rube Goldberg というのはむしろ失礼でしょう。
でも、ひょっとするとこういうことなのでしょうか?
いまやどんな音でも、パーカッションでも、iPhone で Garageband を立ち上げれば演奏可能なのに、現実に演奏をするだなんて、しかもこんな機械を作って! ここが Rube Goldberg 的だということでしょうか?
だとしたら風刺は一巡して、また最初に戻ってきたということでもあるのでしょう。