英語メモ:恵まれた社会の不満、First World Problemの面白さ

2016 年 03 月 05 日

「携帯の電波が弱い」「駐車場の空きスペースが入り口から遠い」「スターバックスのラテが薄い」

本人にとっては確かに小さなイライラを引き起こす出来事なのでしょうけれども、ちょっと引いて見てみるとつまらない日常の不満というものがあります。ひょっとしてそれ、First World Problem では?

ここでいう First World は「先進国」を意味していて、恵まれた先進国の人々が感じる不満のことをからかっていう言葉が First World Problem です。たとえば「ネットの速度 LTE じゃなくて遅い!」という不満は、都会の人には通じるのでしょうけれども、それを地方の 3G しかない場所のひとが理解してくれるだろうか? そもそもネット回線がない国の人は? という意味合いで使います。

小さくなった世界の、小さな問題

First World Problem という言葉の起源は1979年までさかのぼりますが、爆発的に利用され始めたのは2005年にインターネットのミームになってからです。通常、涙を流している女性の写真に、実につまらない不満をテロップで挿入して可笑しさを誘います。

これについてはジェネレーターも存在して、いまも人気があるようです。

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日本で似たような表現を探すなら、「お前それサバンナでも同じ事言えんの?」が一番近いでしょう。つまりは小さな不満や大きな主張を、別の環境にもっていっても成り立つのか? それは恵まれた環境だから言えることでは? というツッコミなのです。

これは世界がウェブでつながり、小さくなったこととも関係しています。LTE について騒げば、それがそもそもない地域の人とすぐにつながっている、そんな世界だからこそ小さな不満の了見の狭さが目立つわけです。

First World Problem を思考のチェックをして使う

でも、First World Problem は少しずるいネタの作り方でもあります。現実にそれが問題になっていて、苛々しているということはあるわけですから、「◯◯の国にはもっと恵まれない人がいるんだよ?」と言われても、現実にその携帯から添付メールが遅れなくては問題は問題のままです。

逆に、ある種の不満をツイッターやブログで発言する前に、これって First World Problem ではないのか? とさり気なくチェックすることで、主張の強靭さを調べることもできます。

それは本当に問題なのか? それとも、道に石が落ちている程度の、無視してもいいことなのでしょうか? この簡単なチェックが教えてくれます。

そして本当に追求すべき問題は何なのか、私たちに備えさせてくれるのです。

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堀 正岳 (Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。

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