悠久の時を刻むアタバスカの滝 #アルバータ秋旅 #カナダ

2014 年 10 月 03 日

先ほどのアタバスカ峠をみはるかす展望台からさほど遠くない場所に、アイスフィールド・パークウェイ前半のハイライト、アタバスカ滝(Athabasca Falls)があります。

滝というと、その落差の大きさや巨大さで語られることが多いのですが「勢い」の指標があったらきっとトップクラスになるかもしれないのが、この滝です。アイスフィールド・パークウェイに来たなら、必見ですよ。

至近距離で見られる迫力の滝

といっても、近づくまではそんな滝があるなどとはわかりません。周囲の風景も平坦な谷間ですので、「滝? そんなすごいものがあるわけなさそうだ」という気分になってしまいます。

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駐車場から歩いてゆくときも静かなものです。

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すると川のほうから、ゴーッとという低い轟く音が聞こえ始めます。この、すぐに全貌がみえない感じがとてもいい。

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いきなり視界が開けて、滝壺がみえてきます。細かい水滴が霧のようにあたりに広がり、空気が急に引き締まります。

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そして滝の全景が! 落差にして23mと、滝としては小規模な方になるのですがその水量、岩に叩きつける勢いに圧倒されます。この日は上流の氷河の溶け水が多かったのか、勢いは特にすごかったそうです。

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アタバスカ滝の魅力はこの圧倒的な力と轟音のすぐ近くにまで歩道が作られていて、安全に見ることができる点です。この写真、ズームでもなんでもなく、まさに目の前でそのまま撮影しています。

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滝を真っ二つに割る岩盤。いったいこれほどの水が流れているというのに、どうしてそこに屹立していられるのか。

アルバータのナイアガラことアタバスカ滝 from mehori on Vimeo.

せめてその迫力の一端だけでも、動画で感じていただければと思います。

なぜここに滝があるのか?

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アイスフィールド・パークウェイを旅する人が、どこかで頭の片隅に入れておかなければいけないのは、この広大な谷間が、かつて氷河期には北半球の大陸を覆い尽くす巨大な氷床の下だったという点です。

氷床は流れるとともに大地を削ってゆるやかな谷を生み出しましたが、このアタバスカ滝のある場所だけは、約5億年前のカンブリア紀珪岩(Gog Quarzite)という鉄のように硬い岩盤だったために滑らかになるよりは段差のように剥ぎ取られたのです。

え、そんなに古い岩盤がむき出しに!? と驚いたのですが、うかつにも忘れていました。このアイスフィールド・パークウェイの南端、レイク・ルイーズの西側はスティーブン・ジェイ・グールドの「ワンダフルライフ」で有名なバージェス頁岩ではないですか。カンブリア紀の化石の宝庫ですよ!

しまった! こんなに近くにいたとは! 立ち寄ることができないのが本当に惜しい。

この岩盤を、氷河の下部を流れる水が次第に侵食し出来上がったのがアタバスカ滝というわけです。いまでも滝壺のなかでは岩がゴロゴロと動きまわって、地形を少しずつ、少しずつ削っています。

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滝を流れ落ちた水は落ち着きを取り戻して、北へ、北極海へと流れていきます。

旅をして、普段の生活にもどると果たして自分がみたあの光景は本当にあったのだろうか? 幻だったのではないか? と思うことがありますが、そうしたとき、こうした動きのあるダイナミックな自然を思い出すようにしています。

あの滝ではいま、この瞬間も、轟音を立てながら悠久の氷河からとけた水が流れ落ちているのです。

参考図書

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今回のアルバータ州訪問レポートについて

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アルバータ州観光公社の依頼を受けたネタフルのコグレマサトさん(@kogure)のお誘いで参加しています。アルバータ州観光公社には渡航費、宿泊、現地での案内をお世話していただいています。記事の内容はすべて私(@mehori)の見たまま、感じたままに書かせていただいています。Thank you Alberta!

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堀 正岳 (Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。

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