妖怪と町が一体に。境港の水木しげるロード:鳥取ブロガーツアーその12 #tottorip
鳥取ブロガーツアー、最後は境港出身の漫画家、水木しげるの記念館と水木しげるロードです。
水木しげるといえば「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔くん」などの記憶に残る名作ですが「のんのんばあとオレ」や「ゲゲゲの女房」といったドラマの形で知ることができるその人となりもまた魅力です。
その水木しげる記念館を中心として駅から数百mの町自体が妖怪一色となっていて、歩いているだけでもその雰囲気にひたることができます。
記念館では水木しげるの初期の貸本作家だった頃の作品や、ヒット作の背景、それに水木しげる氏本人の来歴をみることができます。
目玉おやじがどうして鬼太郎の「親」なのかはいままで複数の説を聞いたことがあったのですが、それはゲゲゲの鬼太郎という作品自体が経過してきた複雑なルーツとも関係があるなどといった情報もこちらで知ることができました。
そして何より水木しげる氏の来歴や、膨大な海外取材の様子なども展示してあるのもこの記念館のおいしいところです。
「ひょっとしたら、水木しげるの最高傑作は水木しげるかもしれない」といわれるその波乱の人生と人となりは連続ドラマ「ゲゲゲの女房」でも描かれていましたが、なぜか惹きつけられます。
記念館をあとにして水木しげるロードへ
さて、ここから駅までがすべて「水木しげるロード」です。左右には多くの妖怪の像が並んでおり、スタンプを押せるコーナーもあります。
土産物屋かとおもいきや、普通の店も妖怪ブランドをいっしょに売っています。
またはこうした看板もさりげなく街に溶け込んでいて、街が妖怪ワールドと一体になっています。
妖怪食品研究所とかかれた店でいただいた、目玉まんじゅう。見た目はブヨブヨしているのかと思うほどの光沢ですが、実際は饅頭で、しかもこれがけっこう美味しい。
作っているのは老舗の和菓子屋だそうで、なるほど手を抜いてないわけです。
銅像は水木しげるロードの各所にあって、すべてを見るためにぶらぶらと散歩してしまいます。
また、水木しげるロードには鬼太郎、ねずみ男、猫娘の三人が随時歩きまわっており、運が良ければ会えるという演出もあります。私が発見した鬼太郎は橋のたもとで猫と遊んでいました。
店だけかと思うと、タクシーの屋根の伝統も目玉になっています。郵便ポストをみても、ATMをみても、電柱をみあげても、そこら中に妖怪の姿です。
水木しげるのキャラクターを利用した観光地化といえばそれはそうなのですが、本来は目にすることのない、でも私達の世界と寄り添っている妖怪の世界が目に見えるようになったと思えば、ぞわぞわと楽しくなってきます。
ご存知のかたはご存知、漫画「もっけ」でもそうしたシーンがさりげなく登場していますが、妖怪ものの作品の楽しさはこうした「人と妖怪」の界面を描き出す点にあります。
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私は自分の本や漫画の購買履歴をみていてもなぜか妖怪ものに偏りがちだということに気づいたことがあって、なぜ妖怪が人を魅了するのかについてはいまも個人的に興味があります。
妖怪は人間文化の余白、つまり科学や理性的思考に当てはまらず、かといって宗教的ドグマに取り込まれることもない、説明されざるもののすべてという余白が構造化されたものだとみることもできます。だから人間の生活との寄り添いが重要で、作品の背骨になるのですね。
そうした闇の知識は、覗き見るだけでもスリリングなものです。
しかし今後、ゲゲゲの鬼太郎を読んだことがある人が減るばかりか、間接的にもきいたことがないという人が増えるにつれて、この水木しげるロードが、そして妖怪そのものが忘れられてゆくのではないかということは気になります。
境港を訪れたら、せめてこの路を歩くひとときだけでも、この見えざる隣人たちのことを思い起こせるとよいなとおもいます。